No. 372012. 11. 08
その他 >

IDATEN夕食会(第10回)開催-10年前と同じ地、同じレストランで

2012年の第10回夕食会の様子

第10回夕食会幹事
東京都立小児総合医療センター
堀越 裕歩

 2012年10月18日にアメリカのサンディエゴで行われたID Weekに合わせて、IDATEN主催の夕食会が行われました。今回はIDSA(Infectious Diseases Society of America; 米国感染症学会)とSHEA(Society of Healthcare Epidemiology of America; 米国病院疫学学会)との合同学会として、ID Weekと名称を変え開催されました。学会には多くの日本人が参加され、この国際学会に合わせて、日本人の交流を深めるため恒例となったこの夕食会が開催されました。今年はこの会では最多の32名の国内外で活躍する先生方が参加されて親睦を深めました。

 ちょうど10年前にサンディエゴのこのステーキレストランで、国際学会に合わせて開催された食事会をきっかけにIDATENのメーリングリストが立ち上がりました。今回はその10周年ということで10年前と同じIDATENに所縁の深いこのレストランを選びました。日本で研修中の若手の先生から中堅、ベテランの先生、北米で研修中の先生やスタッフとして活躍している先生など、IDATENを通して繋がったさまざまな先生方が一同に集い、アメリカサイズの特大なステーキに舌鼓を打ちつつ、楽しい夜を過ごしました。

2002年の第1回夕食会の模様

第1回夕食会幹事
自治医科大学
矢野(五味)晴美

 当時、幹事をさせていただいた私は米国でフルタイムの大学院生をしていました。当時は、臨床感染症の領域は日本ではまだ新しい領域で、“同じ領域を志す仲間とネットワークをつくりたい“と思いつきました。2002年にサンディエゴで開催された米国内の感染症のMajor conferenceにて、日本から参加されていた先生(現サクラ精機の青木眞先生もいらっしゃいました)、米国内で感染症科フェローや指導医をしている先生(現神戸大学の岩田健太郎先生、現新潟大学で現IDATENの代表世話人の齋藤昭彦先生などを含む)にお声をかけ、幸い約15名程度の方にお集まりいただきました。学会終了後に、このようなネットワークを維持したいと思い、お食事会に参加した先生やそのほか私の存じ上げる感染症領域の同僚、先輩などにお声をかけ、40名前後の先生に参加いただいたメーリングリストを立ち上げました。これが現在のIDATENのもとになった「日本の感染症科をつくる会」の成り立ちです。その後、口コミでメーリングリストの参加者が増え、感染症に関する相談や医療自体の熱い議論なども展開されるようになりました。

 2005年1月にメーリングリストの参加者が400名程度になり、その時点で現在の「日本感染症教育研究会IDATEN」という学術研究会として発足することとなりました。特にIDATENの命名や発足にご尽力されたのが岩田健太郎先生です。私は初代代表世話人を務めさせていただきました。その後多くのご関係者の先生方のご尽力にて、現在、IDATENとして活動を続けております。

 10周年のこの年に、偶然にもアメリカ西海岸の同じ地、同じレストランで32名の参加者による夕食会が開かれましたことは、個人的には非常に感慨深く、歳月の流れを感じずにはいられません。炭疽菌によるバイオテロリズムで世界が震撼した2000年代前半以降、感染症の重要性はますます高まり、国内での臨床感染症領域は、この10年で目覚しい発展と向上を遂げています。10周年の今年の夕食会では、今後も国際学会などの機会を利用したざっくばらんな交流を大切にしたいと切に思いました。

米国からの参加者の声

第10回夕食会参加者
ピッツバーグ大学感染症科
福田 由梨子

 成人の感染症科医だけでなく小児感染症や臨床検査の先生方、研修中の先生からベテラン指導医までと、分野・経験・勤務場所とも様々で、感染症に関わる医師の数が増えていることに、驚きと共に感銘しました。日本では感染症が新しい分野であるためか、日本の医療をよくしようという向上心のある方ばかりで、楽しいだけでなくモチベーションもあがりました。交流のきっかけとなるIDATENに感謝するとともに、これからも楽しみです。

日本からの参加者の声

第10回食事会参加者
順天堂大学 感染制御科学/総合診療科
上原 由紀

 今回のID Week 2012は、とりわけ日本人の参加者が多い印象を受けました。日本で働く人、米国で働く人、立場も様々でしたが、新たな出会い、そして懐かしい出会いもあり、特に食事会ではゆっくりとお話が出来たのが何よりの収穫でした。欧米の流れを取り入れた感染症診療は日本ではまだ歴史が浅いですが、日本の利点も活かしつつ、IDATENの仲間と協力しながら少しずつ積み重ねていきたいと改めて思った次第です。

(了)

記事一覧
最新記事
成人 > レビュー
No. 1062024. 10. 23
  • 東京都立小児総合医療センター感染症科・免疫科
  • 大坪勇人、堀越裕歩
  • #本稿に関して開示すべきCOIはありません。 抗菌薬適正使用と加算 薬剤耐性菌の拡大は日本全体ならびに世界の課題であり、薬剤耐性菌対策として抗菌薬の適正使用が求められている。全国抗菌薬販売量(defined daily doses換算)において、2022年時点で内服薬は注射薬のお…続きを読む

    成人 > その他
    No. 1052024. 06. 29
  • 国立感染症研究所 研究企画調整センター/国立成育医療研究センター感染症科
  • 船木孝則
  • 浜松医科大学小児科学講座
  • 宮入 烈
  • #本稿における記述は筆者の個人的見解であり、所属組織やIDATENを代表する公式な見解ではありません。 はじめに 皆さんは、Immunization Agenda 2030(IA2030)というものをご存じだろうか[1]。世界保健機関(World Health Organizat…続きを読む

    その他 >
    No. 1042024. 04. 01
  • 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
  • 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
  • 篠原 浩
  • はじめに 抗微生物薬適正使用の手引き(以降「手引き」)の第三版が2023年11月16日に厚生労働省から公表された[1]。本論説では、この手引き第三版について、実際の医療現場での活用法などを含めて解説する。 さて、抗微生物薬適正使用の手引きの第一版[2]が厚生労働省から公表されたの…続きを読む

    2023年米国感染症学会総会(IDWeek 2023)参加報告
    その他 >
    No. 1032024. 02. 17
  • 聖路加国際病院感染症科
  • 石川和宏
  • テキサス大学MDアンダーソンがんセンター感染症科
  • 松尾貴公
    2023年米国感染症学会総会(IDWeek 2023)参加報告

    2023年10月11日から15日までボストンで開催されたIDWeek 2023は、対面式とバーチャル会議のハイブリッド形式が採られ、9500人以上の参加者を集めました(図1、2)。このIDWeekは感染症領域では世界最大の学会総会で、米国感染症学会(IDSA)、米国小児感染症学会…続きを読む

    成人 > その他
    No. 1022023. 09. 27
  • 国立がん研究センター東病院 感染症科
  • 東京医科大学八王子医療センター感染症科
  • 相野田 祐介
  • はじめに 皆さんはHIV検査の「ウェスタンブロット法」という言葉を覚えていますか? ご存じの方も多いと思いますが、実はすでにHIV感染症の確認のためのウェスタンブロット法を用いた検査は、多くの施設でイムノクロマト(IC)法を原理とするHIV-1/2抗体確認検査法に切り替わっていま…続きを読む

    ASM microbe 2023 体験記
    その他 >
    No. 1012023. 08. 15
  • 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部
  • 京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学
  • 篠原 浩
  • ASM microbe 2023 体験記

    今回、米国微生物学会(American Society of Microbiology;ASM)の学術講演会であるASM Microbeで現地発表する機会に恵まれましたので、情報を共有したいと思います。 1.ASM Microbeについて ASM Microbeは年1回開催され、…続きを読む

    ベトナム熱帯感染症研修
    その他 >
    No. 1002023. 01. 23
  • 国立国際医療研究センター
  • 守山祐樹
    ベトナム熱帯感染症研修

    ベトナム熱帯感染症研修は、ベトナムのベトナム国ホーチミン市熱帯病院(図1)で熱帯病の研修ができるコースです。COVID-19の影響で2020年以降中断していましたが、2023年度は再開予定です。 例年、10~11月ごろに1週間程度、ベトナムのホーチミンに渡航します。ここでは、私が…続きを読む

    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」の紹介
    その他 >
    No. 992022. 12. 17
  • 埼玉医科大学総合医療センター感染症科・感染制御科  Case Western Reserve University/Cleveland VA Medical Center
  • 小野大輔
    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」の紹介

    「タイ・ミャンマー国境における現地で学ぶ熱帯感染症医師研修」は、タイ王国のさまざまな地域・医療機関において、熱帯医学のみならず現地の医療体制、公衆衛生などについても直に学ぶことができる研修です。私も2015年度に参加させていただきましたが、大変有意義かつ楽しい2週間を送ることがで…続きを読む

    マヒドン大学熱帯医学短期研修
    その他 >
    No. 982022. 12. 05
  • 愛知県がんセンター感染症内科
  • 伊東 直哉
    マヒドン大学熱帯医学短期研修

    タイ王国マヒドン大学熱帯医学短期研修は、3日間で熱帯医学の基本を学べるコースです。医師(内科医、小児科医、総合診療医、感染症医)、看護師などを対象としています。2022年度は3年ぶりに短期研修が再開されます。COVID-19の影響を考え、医師・医学生を対象にオンライン研修と組み合…続きを読む

    手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に
    成人 > ケーススタディ
    No. 972022. 08. 10
  • 東京大学医学部附属病院 感染症内科
  • 脇本 優司、岡本 耕
    手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に

    はじめに 全身の中でも手指が最も外傷を負いやすいこともあり、手感染症(hand infection)は頻度の高い皮膚軟部組織感染症の一つである。手感染症は侵される解剖学的部位や病原体などによって分類されるが、中でも化膿性腱鞘炎は外科的緊急疾患であり、早期の治療介入が手指の機能予後…続きを読む