No. 312011. 11. 09
成人 > ケーススタディ

発熱、嘔気、倦怠感、頭痛のため受診した50歳代男性(1/3)

東京女子医科大学 感染症科

藤田 崇宏

(今号は3週連続で配信します。)
※本症例は、いくつかの実際の症例を総合して作成した架空のものです。


 発熱、嘔気、倦怠感、頭痛のため受診した50歳代の男性。

 季節は梅雨時。場所は関東地方。

 当院受診の7日前に全身倦怠感が出現。5日前に37.6℃まで発熱し、4日前に嘔気を自覚し始めた。同時に38.8℃まで発熱したため近医を受診し、その時点の診断は不明だが、経口セファロスポリン、アセトアミノフェンの処方を受けた。3日間内服したが解熱せず、当院を紹介受診した。咳、痰、呼吸苦なし。排尿時痛、排尿困難感なし。

既往歴

高血圧(2年前より未治療)

家族歴

なし

薬剤歴

内服中の薬剤なし

社会歴

運送業に従事

生活歴

  • アルコール:缶ビール3本・日本酒2合/週3~4
  • タバコ:20本×35年

来院時の身体所見

  • 身長168 cm、体重69 kg、BMI 24.4
  • 体温39.5℃、血圧170/94mmHg、脈拍114bpm
  • 呼吸数:記載なし
  • 全身状態:ややぐったりしている
  • 意識レベル:清明、髄膜刺激徴候なし
  • 頭頸部:結膜充血あり、貧血なし、黄疸なし、リンパ節を触知しない、咽頭発赤あり
  • 胸部: 両肺野に雑音を聴取しない
  • 心血管系:心尖部で収縮期の駆出性雑音を聴取
  • 腹部:平坦、軟、圧痛および自発痛なし
  • CVA:両側に叩打痛なし
  • 四肢:浮腫なし

胸部X線撮影

右下肺に透過性の低下を認める。

血 算

  • WBC 10320/μL(Neut 89.1%、Lym 6.5%、Mono 4.3%、Eos 0%)
  • RBC 488万/μL、Hb 15.0g/dL、Hct 42.8%、Plt 19.4万/μL

生化学

  • Na 125mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 90mEq/L
  • BUN 11.7mg/dL、Cr 0.55 mg/dL、BS 134mg/dL
  • AST 115IU/LALT 160IU/LLDH 299IU/Lγ-GTP 218IU/L
  • T-Bil 1.0mg/dL、CRP 20.16mg/dL
  • pH 7.522PCO2 27.9、PO2 64.1、Sat 94.3%
  • HCO3 22.4

検 尿

  • タンパク(3+)、糖(-)、ビリルビン(-)、ケトン(-)、潜血(3+)
  • 赤血球50~99/HF、白血球1~4/HF、扁平上皮<1/HF

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 さて、診断のために、どのような病歴や追加情報が必要でしょうか?
初期評価のために、何をしますか?

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

(続く)
 
記事一覧
最新記事
手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に
成人 > ケーススタディ
No. 972022. 08. 10
  • 東京大学医学部附属病院 感染症内科
  • 脇本 優司、岡本 耕
    手感染症――化膿性腱鞘炎を中心に

    はじめに 全身の中でも手指が最も外傷を負いやすいこともあり、手感染症(hand infection)は頻度の高い皮膚軟部組織感染症の一つである。手感染症は侵される解剖学的部位や病原体などによって分類されるが、中でも化膿性腱鞘炎は外科的緊急疾患であり、早期の治療介入が手指の機能予後…続きを読む

    臨床的にジフテリア症との鑑別に難渋したジフテリア菌保菌の一例
    成人 > ケーススタディ
    No. 862021. 01. 29
  • 井手 聡1、2)、森岡慎一郎1、2)、松永直久3)、石垣しのぶ4)、厚川喜子4)、安藤尚克1)、野本英俊1、2)、中本貴人1)、山元 佳1)、氏家無限1)、忽那賢志1)、早川佳代子1)、大曲貴夫1、2)
  • 1)国立国際医療研究センター国際感染症センター
  • 2)東北大学大学院医学系研究科新興・再興感染症学講座
  • 3)帝京大学医学部附属病院感染制御部
  • 4)帝京大学医学部附属病院中央検査部
  • 臨床的にジフテリア症との鑑別に難渋したジフテリア菌保菌の一例

    キーワード:diphtheria、bradycardia、antitoxin 序 文 ジフテリア症は、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の感染によって生じる上気道粘膜疾患である。菌から産生された毒素により昏睡や心筋炎などの全身症状が起こると死亡…続きを読む

    1週間以上持続する発熱・頭痛・倦怠感と血球減少のため紹介された78歳女性<br>(3/3)
    成人 > ケーススタディ
    No. 662018. 12. 05
  • 日本赤十字社和歌山医療センター 感染症内科
  • 小林 謙一郎、久保 健児、吉宮 伸洋
    1週間以上持続する発熱・頭痛・倦怠感と血球減少のため紹介された78歳女性<br>(3/3)

    本号は3分割してお届けします。 第1号 第2号 *本症例は、実際の症例に基づく架空のものです。 前回のまとめ 和歌山県中紀地方に居住している78歳女性。10日以上続く発熱、倦怠感があった。血球減少が進行したため、血液疾患やウイルス感染症を疑って骨髄検査や血清抗体検査を実施し、重症…続きを読む