No. 212010. 08. 22
成人 > レビュー

成人でみられる先天性免疫異常―Common variable immunodeficiency―について(1/3)

洛和会音羽病院感染症科

土井 朝子

(3分割配信の1回目です)


 プライマリーケアの内科の現場で、まれに副鼻腔炎もしくは肺炎を繰り返す20歳台後半~30歳台前半の患者に遭遇することがある。このようなときには、二次性の免疫不全と共に原発性免疫不全が鑑別に上がるが、そのなかでも多いのがCommon variable immunodeficiency(CVID)だろう。

  この疾患名は、分類不能のlate onsetの低ガンマグロブリン症に対して、生後まもなく発症する重症なX-linked agammaglobulinaemia(XLA) と区別するために名付けられたが(Fudenberg,1971)、1999年にESID( European Society for Immunodeficiencies )とPAGID( Pan American Group for Immunodeficiency )により診断基準が発表された[1]。最近の分子生物学的手法の発達によって、これまでCVIDとみなされていたものが一部除かれるようになってきている。第1回となる今回は、どのような場合にCVIDを疑うかについて述べる。

どのようなときにCVIDを疑うか

一口に原発性免疫不全といっても、B細胞のみならず、T細胞、B細胞とT細胞の合併、補体、好中球それぞれの免疫不全によって様態が異なる。それぞれの免疫不全でみられやすい感染症を表1にまとめた[2][3]。この表から分かるように、抗体欠乏は上記のように副鼻腔炎もしくは肺炎がきっかけとなることが多い。

減弱した免疫系

病 歴

病原体

T細胞

播種性感染症、日和見感染症、持続性のウイルス感染

Pneumocystis jirovecii, Cryptococcus neoformans, herpesvirus

B細胞

莢膜のある(encapsulated)細菌による再発性の呼吸器感染症、慢性下痢症、無菌性髄膜炎

Haemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae, Giardia lambliaCampylobacter spp, enterovirus

好中球

歯肉炎、アフタ性潰瘍、再発性化膿性感染、臍帯断端の分離が遅延

Staphylococcus aureus, Burkholideria cepacia, Serratia marcescens, Aspergillus spp, Nocardia spp.

補体

再発性菌血症・髄膜炎

Neiserria spp.

T細胞、好中球

湿疹、後側側弯、病的骨折、肺・皮膚感染症、粘膜カンジダ症(Hyperimmunoglobuline-mia E : Job’s syndrome)

Staphylococcus aureus, H.influenzae, S.pneumoniae, Candida albicans

表1 代表的な免疫不全と関連する病原体(文献[2][3]より引用改変)

  次回はCVIDの診断・疫学について述べる。


 

<References>
1.Conley ME, Notarangelo LD, and Etzioni A: Diagnostic criteria for primary immunodeficiencies. Representing PAGID (Pan-American Group for Immunodeficiency) and ESID (European Society for Immunodeficiencies). Clin Immunol. 1999 Dec; 93(3) :190–7.
2.Madoff LC: Evaluation of the patient with suspected immunodeficiency, Mandell GL, Benett JE, and Dolin R eds., Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Disease, Churchill Livingstone, 2010, p.168.
3.Morimoto Y, Routes JM: Immunodeficiency overview, Prim Care. 2008 Mar; 35(1):  159-73, viii.

(つづく)

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