No. 202010. 07. 06
成人 > ケーススタディ

多量の腹水貯留の原因精査を目的に来院した90歳女性(1/3)

亀田総合病院 総合診療・感染症科

馳亮太、山本舜悟

(3分割配信の1回目です)

患者の状態

 ある日の内科外来で、他院からの紹介状を持った90歳の女性が、家族と共に受診した。紹介状には「多量の腹水貯留の精査依頼」とあった。

 話を聞いてみると、2か月前から食欲不振と腹部膨満が出現。徐々に悪化して自宅で動けなくなってきたので、かかりつけ医の往診を受け、利尿薬を処方されるなどしたが改善はなく、精査のために紹介されてきたようであった。
体重は2か月間で3kg程度増加しており、経過中に発熱や腹痛を自覚することはなかったという。検診歴はなく、婦人科診察や内視鏡歴もなかった。

 既往は高血圧程度で、自宅で元気に過ごしていた農家の元気なおばあさんである。近医から処方されたCa拮抗薬と、今回追加になったループ利尿薬を内服中。アレルギー歴はなし。喫煙歴や飲酒歴もなく、悪性腫瘍の家族歴もなし。海外旅行歴もない。

 身体所見は以下のとおりであった。

  • 意識清明で会話可能、BP 164/74、HR 104 回/分整、BT 37.2℃、SpO2 90%(room air)、RR18回/分
  • 頭頸部:眼球結膜の黄染なし、クモ状血管腫なし
  • 胸部:ラ音なし、心音異常なし、心雑音なし
  • 腹部:膨満、波動触知、圧痛なし、静脈怒張所見なし
  • 背部:CVA叩打痛なし、脊柱叩打痛なし
  • 直腸診:便潜血は陰性
  • リンパ節:頸部、腋窩、鼠径リンパ節に有意な腫脹なし
  • 皮膚:皮疹なし、手掌紅斑なし

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さて、ここまでに述べた情報から、どのような鑑別疾患を挙げ、次にどのような検査を行なったらよいだろうか?

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(つづく)

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