No. 132009. 10. 07
成人 > ケーススタディ

A Pain in the Neck(1/3)

国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース(FETP-J)

古宮 伸洋

(3分割配信の1回目です)
*本症例は、いくつかの症例を総合して作成した架空の症例です。


[症例] 

20歳代の男性

[主訴] 

咽頭痛

生来健康な男性が、「3日ほど前から喉が痛い」という訴えで、正月休みで混み合う救急外来を受診した。

経過1

 3日前から咽頭痛と発熱が出現し、徐々に増悪傾向にあったため、昨日になって近所の診療所を受診した。インフルエンザ迅速抗原検査が行われたが、結果は陰性であった。感冒と診断され、総合感冒薬が処方された。それでも熱が下がらないということで、本日、救急外来を受診している。

 ROS(review of systems)では頭痛なし/ 鼻水あり/ 咳がたまに出る/ 下痢などの消化器症状なし。

[既往歴]

 特記すべき事項なし、アレルギーなし。

[生活歴]

 タバコは15本/日程度、アルコールは機会飲酒程度、ペット飼育なし、Sick contactなし。

[初診時身体所見]

 BP:110/60、HR:105、BT:38.5℃、RR:記載なし

 眼球・眼瞼結膜:充血、貧血、黄染なし

 口腔内:右口蓋扁桃の腫大、白苔あり

 頚部:右前頚部にリンパ節腫大あり

 胸部:心雑音なし、Cracklesなどなし

 その他:皮疹なし

 診療医は、咽頭炎と判断した。迅速A群溶連菌検査を行ったが、陰性であったためウイルス性の疑いが強いとして、NSAIDsを投与し、帰宅させた。

経過2

 前回の救急外来受診から、さらに6日後、「まだ咽頭痛と発熱が続く」と感染症科外来を受診した。前回受診後に、近所の診療所を再受診していたが、やはり感冒と診断されていた。

 この間に、咳が少し増えて、膿性痰が出てきている。また咽頭痛が強くなり、嚥下もつらくなってきたという。

[再診時身体所見]

 BP:120/60、HR:95、BT:37.5℃、RR:14回/分

 意識清明、頭痛なし、項部硬直なし

 眼球・眼瞼結膜:充血、貧血、黄染なし、点状出血などなし

 口腔内:右口蓋扁桃の腫大あり、白苔なし、アフタなし

 頚部:右前頚部に腫脹、圧痛あり

 胸部:心雑音なし、Cracklesなどなし

 その他:皮疹なし

 さて、診断のためにどのような病歴や追加情報が必要でしょうか?
 初期評価のために何をしますか?

 

(次回へと続く)

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