第21回日本性感染症学会 特別公開講座「内科医のためのSTI診療のコツ」 (3/4)
それでは今回は、自治医大笹原鉄平先生のご講演「日常診療に紛れ込む性感染症~研ぎ澄ます内科医の眼~」のレポートをお届けします。
まず、「感染のための3つの要因」として以下の3つを挙げられました.
- 感染者との接触頻度
- 病原体の感染効率
- 感染期間
さらに、STI の特徴として以下の4つを挙げられました(スライド1)。
- 一般的な感染症である
- 時に無症状で見のがされやすい
- よく合併症や続発症が発生する
- 妊娠や出産に関連する問題と関連する
スライド1(笹原鉄平,2008)
また実際の診察にあたり、いくつかのポイントをあげられ(スライド2、スライド3)、まず「その日の外来で調べるべき検査は行う」ことの重要性を強調されました。STI 診療においては患者さんの治療中断や転院は頻繁にみられ、それが病気の進行はもちろん、感染拡大や耐性菌出現の原因になる可能性があり、「患者さんの受診」は限られたチャンスの一つ、ということです。
スライド2(笹原鉄平,2008)
スライド3(笹原鉄平,2008)
実際の診療においては、チェックすべき代表的な項目と鑑別診断として、
- 咽頭痛、下腹部痛、右季肋部痛、異常妊娠
- 関節痛(急性HIV感染症や淋菌播種、ライター症候群を考える)
- 排便のしぶり(テネスムス)
- 腹部不快感(慢性期のPelvic Inflammatory Diseases)
- 下痢(HIV、腸炎、肝炎など、特に肛門のスワブは淋菌播種診断においても重要な検査)
などを挙げられました(スライド4、5、6)。
スライド4(笹原鉄平,2008)
スライド5(笹原鉄平,2008)
スライド6(笹原鉄平,2008)
実際の問診において、性に関する事実を話し合うのは、患者さんにとっても、医師にとっても勇気のいることです。ちょっとしたコツを用いることで、スムーズなコミュニケーションの中で情報を得ることができます。STI 診療において必要な情報としては、
- 性行為をしているか(特に未成年)
- 性的パートナーの数、関係
- 性的パートナーの性別
- 性行為に使用している部位(性器、肛門、口腔など)
- 避妊方法
などが挙げられますが(スライド7)、こういったことを聴取する質問のコツとして「最近新しい性的パートナーが増えたか」「自分で危険だな、と思った性行為の機会があったか」などの質問項目を例として挙げられました(スライド8)。
スライド7(笹原鉄平,2008)
スライド8(笹原鉄平,2008)
「患者によってはオーラルセックスが性交渉と思っていない」「避妊行動(例えばコンドーム)も、たまに使っているだけなのに「使っている」と答える」など、「医療者と患者の認識の差」による問診の間違いが起こりうることも指摘されました。
また、私達はついつい五感で第一印象を抱きがちですが、見た目や直感で、「性感症はない(もしくは,ある)」と安易に判断をしないように強調されました。
次回はサクラ精機の青木眞先生に座長をおつとめ頂いた「症例検討」の模様をご報告します。
(※掲載にあたり、編集部でスライドの背景色を一部変更させて頂きました。)
(つづく)