No. 52008. 11. 18
成人 > ケーススタディ

不明熱の原因検索のために来院した56歳男性 (3/3)

亀田総合病院

山本 舜悟

(※今号のケーススタディは、3回連載で配信しました。→1回目 2回目

再診日

 4日後の再診日、「今日あたりから熱が下がってきましたよ」ということだった。薬剤中止後ぴったり72時間で解熱してきている。やっぱり薬剤熱か。血液培養はこの時点でまだ陽性の報告はない。
この日は奥様が同席でなかったので、 sexual history について確認した。現在のパートナーは奥様のみ、最後の性交渉は3か月前ということだった。これまで男性との性交渉歴はなかった。
念のため、HIV検査について提案したところ、この際だから調べてくださいということになった。同時にHAV、HBV、HCV、梅毒についても検査を行った。
さらに1週間後に再来してもらうことにした。

 1週間後、結果待ちだったEBV、CMVの抗体検査の結果は以下のとおりで、ともに既感染のパターンだった。血液培養も陰性だった。その他、追加した検査も陰性だった。

EBV:VCA-IgG 160倍、VCA-IgM 陰性、EBNA80倍(陽性)
CMV:IgG38.6(陽性)、IgM 0.40(陰性)
HIV:HIV抗体(EIA)陰性
HAV:HAV-IgM抗体陰性
HBV:HBc抗体陰性、HBs抗原陰性
HCV:HCV抗体陰性
梅毒:STS、TPHAともに陰性
血液培養2セット:陰性

 もう熱は全然出なくなり、アセトアミノフェンも飲んでいないということだった。皮疹もだんだん落ち着いてきたということだった。
 薬剤を中止してから72時間以内で解熱をしている。その他の種々の検査所見も陰性であった。診断確定のためには薬物の再投与が有効だが、それはやめておきますということだった。
 カルテに上記2剤で薬剤熱が起きた可能性があることを記載し、患者さんにも、その旨を印刷して、保険証にはさんでおいて医療機関を受診する際には見せてもらうように伝えた。

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 最終診断:薬剤熱(エピナスチンまたはレバミピドによる)

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 賢明な読者はお気づきかも知れないが、では皮疹の原因はなんだっただろうか。結局のところわからないのだが、もしかしたら、最初に中止したミノサイクリン、ロキソプロフェン、メコバラミンのどれかによる薬疹だったのかもしれない。頻度的にはミノサイクリンが怪しいと思うが。
 薬剤熱は疑わなければなかなか診断は難しい。気づかなければ不要な検査と治療薬の追加を繰り返し、追加した薬剤でまた副作用がでてしまったら目も当てられない。
 まず自分のやっている医療行為によって患者が害を被っていないかどうかを常に意識しておく必要がある。
 今回は被疑薬として、エピナスチンという抗アレルギー薬が挙がった。抗アレルギー薬がアレルギーを起こすとは皮肉な話だが、原則としてはどのような薬剤でも薬剤熱を起こしうるということは覚えておく必要がある。
 筆者は他にNSAIDs(ロキソプロフェン)による薬剤熱も外来で経験したことがある。腰椎麻酔後の発熱、腰痛という患者だったが、当然最初は硬膜外膿瘍など手技に伴う感染の合併がないか疑った。しかし、MRIで否定された。それでも、経過を整理してみると、明らかに腰椎麻酔後から熱がでるようになっているのに気づいた。他に加わった要素としては、痛み止めとして、ロキソプロフェン(ロキソニン)が処方されるようになっただけだった。教科書的にはNSAIDsの薬剤熱があるとは知っていたが、本当に解熱剤が薬剤熱を起こすことがあるのかどうかと、半信半疑で中止してもらったら、すぐに解熱した。

 薬剤熱に解説については、マインドマップ(薬剤熱薬剤熱を起こす薬剤)にまとめてみたので、参考にされたい。

(この症例は実際にあった症例を元に個人情報などに配慮しつつ、再構成したものです。)


参考文献:
Infect Dis Clin North Am 1996;10(1):85-91.
Med Clin North Am 2001;85(1):149-85.

(了)

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