成人でみられる先天性免疫異常―Common variable immunodeficiency―について(2/3)
(3分割配信の2回目です 1回目)
今回はCVIDの診断・疫学について述べる。
診 断
CVIDの診断は除外診断である。CVIDが疑われた場合は、二次性の免疫抑制をきたしうる原因のリスクにかかわる詳細な病歴聴取を行なわなければならない。液性免疫不全に合致しそうであれば、最初の検査は適切な血液検査によるスクリーニングである(表2)[4]。
反復性の細菌感染を起こしている場合の鑑別診断としては、4歳未満であれば、Severe Combined Immune Deficiencies(SCID), 一過性の乳児の低ガンマグロブリン血症、XLP症候群、骨髄異形成症候群、Wiskott-Aldrich症候群、そしてまれなcombined immune deficiency、嚢胞性線維症、HIVが挙げられる。4歳以上で免疫グロブリンが低下していれば、次に二次性の原因がないかを確認する(表3)[5]。
CVIDの特徴は免疫グロブリンの低下で、なかでもIgGはその年齢の正常下限を下回っていなければならない。IgG値には幅があるが、診断時のIgGは「<4.5g/L」が大半であることがヨーロッパのコホート研究で報告されている[6]。
IgAは正常~軽度低下していることが多く、単独で低下している場合には、選択的IgA欠損症を考慮しなければならない。
IgMの値は低下~正常~上昇とばらつきがある。
CVIDにおけるB細胞数にはかなりの幅があり、まったく認めないものから著明に増加しているものまであるが、多くは正常範囲内である。49歳以上でB細胞欠損がある場合は胸腺腫の合併を疑う必要があるし、増加している場合はモノクローナリティの存在が示唆される。
IgEの著明な上昇がみられる場合は、アトピー性の疾患もしくは免疫不全に関連するhyper IgE症候群(Job’s syndrome)が示唆される。
CVIDの診断をするには、免疫グロブリン値だけでは不十分であり、特定の抗体産生の減少を証明しなければならない。CVIDの診断基準はいくつも存在するが、明確なものはない。最近提唱されているものを表4に示した[7]。
表4のクライテリア3の「蛋白抗原反応」とは、ワクチンに対する反応を指す。これはジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドを使用することが一般的であるが、そのほかにもA型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)、インフルエンザ桿菌結合ワクチン接種などに対する抗体産生をみることも可能である。
また、水痘、帯状疱疹、麻疹、侵襲性肺炎球菌の感染後に抗体産生をみる方法もあり、2つ以上のワクチン接種もしくは抗原曝露後に特定のIgGの産生をみることが推奨されている。もちろん、これらの抗原による免疫原性の強さは異なり、破傷風トキソイド、麻疹、水痘はより強いと考えられている。
ただし、抗体産生が一過性であることもあるため、強さのみならず持続性の確認が必要な場合もある。例えば、中等度に免疫グロブリンが低下しているが、いくらかは抗体産生が保持されているような患者は、将来的に免疫機能が悪化する可能性があるため、クライテリアを満たしそうな際に再度確認するのがよいだろう。抗体のチェックは、いずれもワクチンの投与前と接種の3~4週後に行なうとよい。通常、CVIDであれば、蛋白抗原に対する抗体反応は4倍未満か一過性である。
実際には、他の続発性低ガンマグロブリン血症を除外して、「よく分からないけど、これしか当てはまるものがない」という不安定な診断になることが多い。
・CBCと分画(末梢血スメア) ・血糖と脂質を含む代謝検査 |
<疾 患> ・熱傷 ・蛋白喪失性腸症 ・ネフローゼ症候群レベルの蛋白尿 ・悪性腫瘍(55歳以上で胸腺腫、リンパ腫系悪性腫瘍) <薬剤性> ・降圧薬 captopril ・抗マラリア薬 chloroquine、primaquine ・抗てんかん薬 carbamazepine ・NSAIDS fenclofenac、 sulfasalazine ・抗リウマチ薬 gold salts ・キレート薬 penicilamine |
1. 4歳以上 2. 成人ではIgG<4.5g/Lもしくは年齢の2.5%未満で、通常はIgAレベルが正常下限未満かIgMが正常下限未満 3. ワクチン接種もしくは抗原曝露による蛋白抗原反応の欠乏が、少なくとも2回の検査でみられる 4. ほかに知られている抗体産生の原因が除外できている (IUIS (International Union of Immunological Societies) 2007で定められている) |
疫 学
CVIDは、少なくとも3万人に1人の割合で存在すると考えられている[8]。ただし、各国のデータにより割合は異なっている。
次回はCVIDの合併症とマネージメントに関して述べる。
<References>
4.Deane S, et al: Common variable immunodeficiency: etiological and treatment issues. Int Arch Allergy Immunol. 2009; 150(4): 311-24.
5.Agarwal S, Cunningham-Rundles C: Assessment and clinical interpretation of reduced IgG values. Ann Allergy Asthma Immunol. 2007 Sep; 99(3): 281-3.
6.Chapel H, et al: Common variable immunodeficiency disorders: division into distinct clinical phenotypes. Blood. 2008 Jul 15; 112(2): 277–86.
7.Chapel H, Cunningham-Rundles C: Update in understanding common variable immunodeficiency disorders (CVIDs) and the management of patients with these conditions. Br J Haematol. 2009 Jun; 145(6): 709-27.
8.
Stray-Pedersen A, Abrahamsen TG, Frøland SS. Primary immunodeficiency diseases in Norway.J Clin Immunol. 2000 Nov;20(6):477-85.
(つづく)