第21回日本性感染症学会 特別公開講座「内科医のためのSTI診療のコツ」 (2/4)
(4分割配信の2回目です。 1回目)
それでは今回は、神戸大学岩田健太郎先生の「内科医の診療に必要なSTIの知識とスキル」についてレポートします。岩田先生は、まず冒頭に「STIへの心の壁はむしろ医療者側にあることが多い」と指摘されたうえで、施設内のコンセンサス作り(例えば内科医が内診を行うことに対して全医療者が同意することなど)の重要性を指摘されました。
STI 診療の原則としては、
- 一つの性感染症を見つけたら他の性感染症も探す
- パートナーにも介入する
の2点を上げられました。そして、2006年に発表されたCDCのSTD治療ガイドラインを引用され、「予防・教育の5つのP」が重要であることをお示しになりました(スライド3)。その後、実際の診察方法としては淋病、膣炎、尿道炎、外陰部潰瘍、梅毒、HIV、コンジローマなどの各疾患についてご紹介されました。その際に実際に患者を診察する時は「診断ではなく、症状で切る」ことが有用であることをお示しになりました。例えば「生殖器に病変がある」場合は、スライド4のような疾患が鑑別にあがりますし、「生殖器以外に病変がある」場合は、スライド5のような疾患が鑑別にあがる、というわけです。 特に梅毒や淋病は、生殖器に病変があるイメージが強いので注意が必要です。
スライド3(岩田健太郎,2008)[1]
スライド4(岩田健太郎,2008)
スライド5(岩田健太郎,2008)
例えば淋病では、男性では塗抹でグラム陰性球菌の検出が診断根拠となりますが、女性では外陰部に淋菌ではない常在菌のナイセリア属が存在することがあり、グラム陰性球菌がみられても培養結果まで待たないといけないことがあります。また尿道炎を疑う場合は、膀胱炎と異なり中間尿ではなく「初尿」を検査する必要があります。その他に、淋病で見られる皮疹は水疱様で、手首や足首に見られることが多いことや、全身疾患としての淋病の特徴として2~3個の非対称性の関節炎が多く、またアキレス腱など「筋肉の付け根」が痛くなるのが特徴であることを紹介されました。その他、ヘルペスや梅毒など多岐にわたりご紹介になりましたが、ここでは割愛させていただきます。
また、妊婦診療における感染症のポイントとして、生乳や生チーズを避けること(リステリア感染の危険性があるため)、生肉を避けること(E型肝炎の危険性があるため)や、B群溶連菌のスクリーニングの必要性や無症候性細菌尿の治療の必要性などについても言及され、さらには性暴力への対応についてもご紹介されました。
最後にまとめとして、STIは多彩な症状を示すために内科系の医師も診療の訓練を行う必要があること、そして男女ともに生殖器の診察の重要性をあげられました。
次回は、自治医大の笹原鉄平先生の「日常臨床に紛れ込む性感染症~研ぎ澄ます内科医の眼~」のレポートをお送りします。
<References>
1.Workowski KA, Berman SM. Sexuallytransmitted diseases treatmentguidelines, 2006. MMWR 2006;55(RR11):1-94.
(つづく)