糖尿病患者がかかりやすい感染症
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(※今号のミニレビューは、3回連載で配信します。)
糖尿病患者が易感染性があるというのは周知の事実です。今回のレビューでは、コモンな糖尿病にどのような感染症が合併しやすいのか、マネージメントはどのように行うべきなのか、というところにフォーカスをあててみたいと思います。
糖尿病ではなぜ感染症が増えるのでしょうか? それは、もちろん高血糖と関連があり、遊走能や接着、貪食能、細胞内殺菌力といった好中球の機能が低下することがわかっています(1、2)。補体を介した貪食機能も低下します。ワクチンにおける抗体産生の反応で示される液性免疫ははほとんど低下しないといわれていますが、細胞性免疫も低下することがわかっています。このように糖尿病患者では複合的な免疫不全が生じているのです。
その他にも、TNF-αなどの炎症性サイトカインが高血糖により増加していること、これが様々な機序を惹起しインスリン抵抗性が生じ、さらに高血糖になるという悪循環が生じているのです。さらに糖尿病による微小血管障害により、炎症反応が起こると低酸素環境から嫌気環境が作られ、このことが好中球と単核球の機能低下に関与することもわかっています。
ではどのような感染症が増えるのでしょうか。糖尿病患者の易感染性は一般に信じられているほどのエビデンスはなかったのですが、特に特定の疾患(肺炎、尿路感染、皮膚粘膜疾患)は増加することが示されています(3、4)。また、感染症関連の死亡率は特に心不全が併存する場合に死亡率が高いということがいわれています(5)。そのほか、いくつかの覚えておくべき特徴的な感染症、まれな重症感染症がありますので、次回以降、それらについて述べていきたいと思います。
<References>
1. Infections in diabetes mellitus and hyperglycemia, Infect Dis Clin N Am 2007, 21: 617
2. Infections in patients with diabetes mellitus, N Engl J Med 1999;341: 1906
3. Increased risk of common infections in patients with type1 and type 2 diabetes mellitus, Clin Infect Dis 2005; 41: 281
4. Quantifying the risk of infectious diseases for people with diabetes,Diabetes Care 2003; 26: 510
5. Diabetes and the risk of infection-related mortality in the U.S,Diabetes Care 2001; 24: 1044
6. Diagnosis and treatment of diabetic foot infections, Clin Infect Dis 2004;39: 885
7. Fungal sinusitis, N Engl J Med 1997; 337: 254
8. Posaconazole for salvage therapy for zygomycetes, Antimicrob Agents Chemother 2006, 50; 126
(次回に続きます)