No. 22008. 08. 10
成人 > レビュー

黄色ブドウ球菌菌血症のマネージメント (1/3)

  • 横浜市立大学病態免疫制御内科学  (リウマチ・血液・感染症内科、呼吸器内科)
  • 岡 秀昭

    (※今号のミニレビューは、3週連続で配信します。)


    黄色ブドウ球菌は、血液培養でよく検出される重要な病原体の1つです。今回は黄色ブドウ球菌の菌血症のマネージメントをテーマに、更には黄色ブドウ球菌菌血症に対する選択薬をレビューしてみます。

    初回はまず、黄色ブドウ球菌が血液培養から検出されたら()、どのように解釈していくか考えてみましょう。

    図 黄色ブドウ球菌

    黄色ブドウ球菌が血液培養で陽性になったら?

    クラスターを形成したグラム陽性球菌が血液培養で陽性になり、コアグラーゼ試験が陽性であったならば、黄色ブドウ球菌菌血症であると考えます。もし、1セットの血液培養しか黄色ブドウ球菌が検出されなかった場合はどのように考えたらいいでしょうか? ある報告では血液培養で検出された黄色ブドウ球菌は87.2%で起因菌であるされており、コンタミネーションと判断せずに真の菌血症として対応することが望ましいと考えます。

    黄色ブドウ球菌菌血症と判断したならば、迅速な経験的抗菌薬投与を開始するとともに、感染源を積極的に探しに行くことが大切です。黄色ブドウ球菌菌血症の感染源としては、まず、血管内カテーテルやデバイスからの感染が重要です。次に、皮膚や軟部組織の感染巣がないか、人工呼吸管理を受けている患者では肺炎も考える必要があります。

    しかし3分の1の患者では、黄色ブドウ球菌菌血症の感染源は不明であるとされ、そのような場合は感染性心内膜炎Infective endocarditis;IE、椎体炎、硬膜外膿瘍、化膿性関節炎、腎臓や脾臓などの腹腔内膿瘍など、合併症や転移性病変に注意が必要です。ですから、身体所見では心雑音の有無、関節痛腫脹、脊椎の圧痛の有無、IEに特徴的な紫斑や結膜下出血の有無などを注意深く確認することが大切だと思います。

    黄色ブドウ球菌菌血症で、どのようなときに合併症を疑うか?

    初めの血液培養陽性から治療開始後、48から96時間後の血液培養持続陽性が、もっとも強く合併症を疑う徴候であったとされています。そのため、黄色ブドウ球菌菌血症では治療開始後2から4日以内に血液培養のフォローを行い、消失を確認することが大切です。もし、消失しない場合は強く合併症を疑い精査していく必要があると考えます。他には若年、市中発症である、治療開始後72時間以上の発熱の持続も合併症を疑う重要な所見とされています。

    今回は、黄色ブドウ球菌の菌血症の診断と、どのようなときに合併症を疑うかについて述べました。黄色ブドウ球菌菌血症は1セットの血液培養陽性でも本物として対応し、血液培養の持続陽性では合併症を強く疑うことが大切です。次回は、合併症の精査はどのタイミングで、何を行なうか? 異物はどうするか?治療期間はどのくらい、何を指標に決めるのかを考えたいと思います。


    <参考文献>

    1)Sara E.Cosgrove and Vance G. Fowler,Jr:Management of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus bacteremia: Clin Infect Dis 2008;46(Suppl5)S386-93.
    2)Lowy FD:Staphylococcus aureus infections.N Engl J Med 1998 Aug 20;339(8):520-32.
    3)青木眞:レジデントのための感染症診療マニュアル第2版 p985-989.

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